「夢見ることをやめてはいけないよ」
「前兆に従ってゆきなさい」
アルケミスト−夢を旅した少年
「おまえが何かを本当にやりたいと思う時は、その望みは宇宙の魂から生まれたからなのだ。それが地球におけるおまえの使命なのだよ。自分の運命を実現することは、人間の唯一の責任なのだ。おまえが何かを望むときには、宇宙全体が協力して、それをたすけてくれるのだよ」
老人と同じことを、自分ができることに、彼は気がついた。それは、ある人が彼の運命にそっているのか、それとも遠く離れているのか、感知することだった。彼らを見るだけでわかった。
あせるのはやめて、のんびりと、歩いてみることにした。そうすることによってのみ、前兆を読むことができるのだ。もし、衝動にかられて先を急ぐと、神様が道すじに置いてくれたサインや前兆を見落としてしまうだろう。
「マクトゥーブ」「これがわかるためには、アラブ人に生まれなければならないよ。しかし、おまえの国の言葉で言えば、『それは書かれている』と言うような意味さ」
少年は、直感とは、魂が急に宇宙の生命の流れに侵入することだと理解し始めた。そこでは、全ての人の歴史がつながっているからだ。「マクトゥーブ」と少年はクリスタル商人のことを思い出しながら、つぶやいた。
「私たちは持っているものを失うことを恐れています。しかし、自分の人生の物語と世界の歴史が、同じ者の手によって書かれていると知った時、そんな恐れは消えてしまうのです」
すべての本を通してくり返されている一つの考えがあった。それは、すべてのものはただ一つのものがさまざまに現れたものにすぎないということだった。
「わしは未来を読んでいるわけではない。未来を推測しているだけだ。未来は神に属している。未来がわかっているのは神様だけだ。どうやって未来を推測するのかだって？ それは現在現れている前兆をもとに見るのだ。秘密は現在に、ここにある。もしおまえが、現在によく注意していれば、将来起こってくることも良くなるのだ。神様は、ほんの時たまにしか、将来を見せてはくれぬ。神様がそうする時は、それはたった一つの理由のためだ。すなわち、それは、変えられるように書かれている未来の場合だよ」
夢を追求している時は、心は決して傷つかない。それは、追及の一瞬一瞬が神との出会いであり、永遠との出会いだからだ。